亭歴子(ていれきし)について

　亭歴子(ていれきし)はアブラナ科イヌナズナの種子を乾燥したもので、味は辛・苦、性は寒です。中国産はマメグンバイナズナ、ヒメグンバイナズナの種子で、日本産はイヌナズナの種子で、朝鮮産はタネツケバナの種子など、産地により異なることが、いずれもアブラナ科(Cruciferae)であります。
　漢方では逐水・止咳・消腫の効能があり、喘息や浮腫などに用いられます。肺に滞った水分を除き、胸水や肺水腫・多量の痰などの状態を改善します。また通便作用もあるが、他の逐水薬とは異なり、激しい下痢にはなりません。ただし胃に対する刺激性があるため、一般に大棗の煎液で利用します。
　主として胸腔内の水分の排出（瀉肺）に用います。中医学の理論によると、肺に水分がつまると呼吸困難・水腫が生じます。現代医学的には、肺や肋膜腔内に多量の分泌物や液体がたまると、心臓・肺の機能に影響がおよんで呼吸促迫・喘息が生じ、ひどいときには心不全による水腫が発生します。このような症状は肺性心・胸水などでよくみられ、亭歴子(ていれきし)が適しています。